生活習慣には、食事、飲酒、喫煙、運動、睡眠などがあります。これらについて悪い習慣がひとつまたは複数あることにより引き起こされる病気の総称を生活習慣病といい、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、高尿酸血症などがこれにあたります。
生活習慣病のことを10年ぐらい前までは「成人病」と呼んでいました。なぜなら、かつては加齢(年を重ねること)によって発病するという考えられていたからです。
しかし近年は、発病の原因は加齢ではなく長年の生活習慣が深く関わっていることがわかってきたため、1997年頃から「生活習慣病」という名称が使われるようになりました。
メタボリック症候群(メタボリックシンドローム)
高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、高尿酸血症などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、肥満(特に内臓脂肪型肥満)が原因であることがわかってきました。
このような、内臓脂肪型肥満によって、さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態を「メタボリック症候群(メタボリックシンドローム)」といい、生活習慣病の前段階になります。
よくない生活習慣の積み重ねが原因となって起こるため、生活習慣の改善によって、予防・改善できます。
厚生労働省が行なった平成16年の国民健康・栄養調査によると、40~74歳では、メタボリック症候群(通称・メタボ)が強く疑われる人は約940万人、その予備群と考えられる人は約1020万人、合計1960万人にも上ります。
男性では2人に1人がメタボか、その予備群と考えられており、女性では5人に1人という、非常に高い数字が出ています。
診断基準
【ウエスト:男性85cm以上 女性90cm以上】
さらに、これに加えて、下記のうち2つ以上あてはまる場合にメタボリック症候群と診断されます。
- 血中脂質
中性脂肪値150mg/dl以上・HDLコレステロール値40mg/dl未満のどちらか、もしくは両方。 - 血圧
収縮期血圧が130mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上 - 血糖空腹時血糖値
110mg/dl以上
メタボリックシンドローム診断基準検討委員会で定められている、日本のメタボリックシンドロームの基準
内臓肥満チェック
- □ 体重は変わらないが最近ベルトがきつくなってきた。
- □ 最近太ってきた
- □ おなかが出ているのにたるみをつまんでもあまり厚みがない。
- □ ほとんど運動をしていない
- □ 甘いものが好き
上記の項目に1つでも当てはまった人は、メタボリック症候群に要注意です!
ご自身でメタボリック症候群を予防・改善しましょう
生活習慣病の前段階であるメタボリック症候群を予防・改善することは、生活習慣病の予防・改善に繋がります。ご自身の生活習慣を見直して予防しましょう。
食生活の改善 | 「主菜はなるべく肉より魚を」「高コレステロール食品に注意」「糖分、アルコールは控えめに」「食物繊維を積極的に摂る」「アルコールはほどほどに摂取」を心がけましょう。 |
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適度な運動 | 有酸素運動(ウォーキング、サイクリング、水泳、水中ウォーキングなど)を行い、脂肪の燃焼しましょう。有酸素運動は20分以上しなければ効果がないため、 1回の運動は最低でも30分は行いましょう。ご自身の体調やペースに合わせ、毎日無理せず適度に行う事が重要です。 |
禁煙 | 喫煙は、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らし、動脈硬化を進めます。喫煙している人はメタボリックシンドローム・生活習慣病になりやすいといわれていますので、禁煙も予防に繋がります。 |
次に、生活習慣病の主な疾患である、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、高尿酸血症についてご説明します!
高血圧
血圧とは、血液が血管の中を通るとき、血管にかかる圧力のことをいいます。
高血圧とは、血管に強い圧力がかかり、血管に負担をかけすぎている状態をいい、進行によっては心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる恐ろしい病気です。
「たかが高血圧」と軽視するのは厳禁。高血圧にならないよう予防すること、すでに血圧が高い場合には高血圧と上手に付き合い適切な治療を受けることが非常に重要です。
高血圧の10%程度は、はっきりした原因が分かっていますが、多くの方は原因不明とされています。
高血圧を発症する要因として、先天的な要素と後天的な要素が絡み合うことが挙げられます。元々血圧が上がりやすいといった先天的な要素(遺伝的要素)と、睡眠不足、食生活のバランスの崩れ、運動不足などといった後天的な要素(よくない生活習慣)があり、明確な判断がつきにくいのが現状です。
診断基準
分類 | 最高血圧(収縮期血圧) | 最低血圧(拡張期血圧) |
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高血圧 | 140mmHg以上 | 90mmHg以上 |
正常高値 | 135-139mmHg | 80-90mmHg |
正常 | 130mmHg未満 | 80mmHg未満 |
※ 但し、血圧は1日のうちでも大きく変動し、緊張したときや運動をしたときには血圧が大きく上昇したりします。一時的に血圧が正常範囲を超えて上昇するというのは正常な反応であるため、高血圧とは呼んでいません。
高血圧について、より詳しくはこちらをご覧ください。>> 高血圧ページ
脂質代謝異常
脂質代謝異常症とは血液の中にある脂質成分のバランスに異常がある状態のことをさし、血液の中に溶けているコレステロールや中性脂肪などの脂肪成分(脂質)がうまく代謝出来ずに、異常に多い状態を高脂血症と言います。
脂質代謝異常そのもので自覚症状を起こすことはほとんどなく、検診により指摘され、医療機関を訪れるケースがほとんどです。脂質代謝異常は動脈硬化の重要な危険因子であり、心筋梗塞、狭心症、高血圧の原因にもななり、生命に危険をもたらします。
日本人の血清コレステロール値は、男性では30~70代までは加齢の影響をほとんど受けませんが、女性では加齢とともにコレステロール値が上昇し、特に閉経後に上昇します。
脂質代謝異常は加齢や食事・運動などの生活習慣だけでなく、遺伝因子によって大きく影響を受けます。
診断基準
高LDL(悪玉)コレステロール血症 | 140mg/dL以上 |
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低HDL(善玉)コレステロール血症 | 40mg/dL未満 |
高中性脂肪血症 | 150mg/dL以上 |
※ 空腹時の血液検査で行います。3つの項目のうち1つでも基準を満たしていれば、脂質代謝異常症と診断されます。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と善玉コレステロール(HDLコレステロール)
コレステロールや中性脂肪はリポタンパク質という物質に包まれて、血液中を移動します。LDLとHDLはコレステロールそのものではなく、コレステロールや中性脂肪を運ぶ、このリポタンパクの種類をいいます。
LDLはコレステロールを全身に運ぶという重要な役割があり、LDLそのものは決して悪いものではなく、人間の体にとって必要なものです。しかし、必要以上に多くなると、細胞や血液の中にコレステロールがたまって酸化してしまい、動脈硬化などの原因になることから、悪玉コレステロールと呼ばれています。
HDLコレステロールは血液の中のコレステロールや、体中の末梢組織の血液の壁にこびりついているLDLを回収するという役割があります。HDLコレステロールが多いと動脈の壁にコレステロールがたまりにくく動脈硬化の予防になることから、善玉コレステロールと呼ばれています。
治療目標値
HDLコレステロール血症 | 40mg/dL以上 |
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高中性脂肪血症 | 150mg/dl未満 |
LDLコレステロール
心筋梗塞や狭心症(冠動脈疾患)のあるかた | 100mg/dl未満 |
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冠動脈疾患のないかた、※リスクの数に応じて | (3個以上)160mg/dl未満 (1〜2個)140mg/dl未満 (0個)120mg/dl未満 |
※主なリスク因子
- 男性45歳・女性55歳以上
- 高血圧
- 喫煙
- 家族に冠動脈疾患の人がいる
- 低HDLコレステロール血症(40mg/dl未満)
糖尿病
食事や飲み物の中に含まれている糖分は、体内で吸収されるとブドウ糖になり血液中に入ってきます。この血液中のブドウ糖のことを血糖と言います。
血糖は、すい臓でつくられるインスリンというホルモンによってエネルギーになったり、肝臓にグリコーゲンとして貯蔵されたりします。
インスリンは血糖値を下げる役割をしているのですが、このインスリンが欠乏したり、働きが悪くなったりすると、血糖が増加し、高血糖になっている状態を糖尿病といいます。
糖尿病は自覚症状が少ないために、治療しないで放置している人も少なくありません。放置しておくと、様々な合併症を引き起こすのが、この病気の特徴であり、恐ろしい点です。
診断基準
空腹時血糖 | 126(mg/dl)以上 |
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75グラムのブドウ糖を飲み2時間後の血糖 | 200以上 |
随時血糖 | 200以上 |
ヘモグロビンA1c | 6.5%以上 |
1回だけの検査で数値を越えている場合は糖尿型と呼ばれます。また、
- 血糖値・ヘモグロビンA1cともに糖尿病型→糖尿病
- 血糖値のみ糖尿病型の場合、次のいずれかを満たせば→糖尿病
● 糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)
● 確実な糖尿病性網膜症の存在 - ヘモグロビンA1cのみ糖尿病型の場合、再検査で血糖値が糖尿病型→糖尿病
と、診断されます。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)とは
ヘモグロビンとは赤血球の中に含まれるたんぱく質の一種で、全身に酸素を運搬するという重要な役割を果たしています。高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内のヘモグロビンと結合し、この結合したものをグリコヘモグロビンと呼びます。このグリコヘモグロビンには何種類かあり、糖尿病と密接な関係を有しているのが、ヘモグロビンAc1(HbA1c)です。
HbA1c値は、現時点より過去1~2ヶ月間の平均血糖値を表しています。通常、血糖値は変動が激しいので、病院で一時的に調べた血糖だけではその人の糖尿病の状態をみることはできません。そこで過去の血糖値を反映するHbA1cがおり、血液検査でとても大事な値になります。
※ 「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」が、これまで日本独自の基準だったものが、2012年4月1日から世界標準の数値表記に合わせて一斉に引き上げられました。
JDS(日本独自の値:旧)HbA1c 6.1%以上 → NGSP(国際標準値:新)HbA1c 6.5%以上
血糖コントロール目標
コントロール目標値 注4)
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目 標 |
注1)
血糖正常化を 目指す際の目標 |
注2)
合併症予防 のための目標 |
注3)
治療強化が 困難な際の目標 |
HbA1c値(%) |
6.0未満
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7.0未満
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8.0未満
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(糖尿病診療ガイドライン2012ー2013において掲載される「血糖コントロール目標」の改訂図より)
注1)適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの
副作用なく達成可能な場合の目標とする。
注2)合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。対応する血糖値としては、
空腹時血糖値130mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満をおおよその目安とする。
注 3)低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。
注 4)いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとする。
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値が変更になりました。詳しくは下記の表をご確認ください。
カテゴリー1
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カテゴリー2
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カテゴリー3
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注1) 患者の特徴・ 健康状態 |
①認知機能正常
かつ ②ADL自立 |
①軽度認知障害〜軽度
または ②手段的ADL低下, 基本的ADL自立 |
①中程度以上の認知症
または ②基本的ADL低下 または ③多くの併存疾患や機能障害 |
注2)
なし |
7.0%未満
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7.0%未満
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8.0%未満
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重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤,SU薬,グリニド薬など) の使用 健康状態 |
注3)
あり |
65歳以上
75歳未満 7.5%未満 (下限6.5%) |
75歳以上
8.0%未満 (下限7.0%) |
8.0%未満
(下限7.0%) |
8.5%未満
(下限7.5%) |
治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的 ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って重低血糖の危険性が高くなることに十分注意する。
注1)
認知機能や基本的ADL(着衣、移動、入浴、トイレの使用など)、手段的ADL(IADL:買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理など)の評価に関しては、日本老年医学会のホームページを参照する。エンドオブライフの状態では、著しい高血糖を防止し、それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先する。
注2)
高齢者糖尿病においても、合併症予防のための目標は7.0%未満である。ただし、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物両方の副作用なく達成可能な場合、または薬物療法の副作用なく達成可能な場合の目標を6.0%未満、治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とする。下限を設けない。カテゴリー3に該当する状態で、多剤併用による有害が懸念される場合や、重篤な併存疾患を有し、社会的サポートが乏しい場合などには、8.5%未満を目標とすることも許容される。
注3)
糖尿病罹病期間も考慮し、合併症発症・進展阻止が優先される場合には、重篤低血糖を予防する対策を講じつつ、ここの高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい。65歳未満からこれらの薬剤を用いて治療中であり、かつ血統コントロール状態が表の目標や下限を下回る場合んは、基本的に現状を維持するが、重症低血糖に十分注意する。グリニド薬は、種類・使用量・血糖値等を勘案し、重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される場合もある。
(糖尿病治療ガイド2016-2017(抜粋)より)
高尿酸血症
高尿酸血症とは、尿酸が多く作られすぎていたり、尿酸を排泄する力が低下することにより、血液中の尿酸が過剰に蓄積した状態のこと、つまり尿酸の濃度が高い状態のことをいいます。
自覚症状はありませんが、放置すると痛風(体内に尿酸がたまり、様々な場所に尿酸塩の結晶がたまって起こる急性の関節炎)を引き起こし、この他にもいろいろな合併症(腎臓障害、尿路結石、動脈硬化)の危険因子となります。
原因は、一般的に、過食、飲酒、運動不足、肥満、ストレスなどのよくない生活習慣によるものが大半で、特にビールのとりすぎは高尿酸血症の原因となります。
また、肉類にかたよった食事内容も尿酸値が高くなります。このような食生活を続けていると、体重が増える事が多いため、結果として高尿酸血症は肥満の患者さんに合併する傾向があります。
また、これらの生活習慣は、糖尿病を招く習慣と、ほとんど同じ内容のため、糖尿病の人は尿酸値が高い人が多く、また高尿酸血症の人は糖尿病になりやすい傾向があるため、生活習慣を改善することは糖尿病にとっても、高尿酸血症とっても有効です。
診断基準
血液中の尿酸値 | 7.0mg/dl以上 |